3年目の世界文学全集への挑戦

40代既婚の男がふと思い立って世界文学全集に挑んでいます

機知と生気に満ちた若者

 『ジャン・クリストフ』の今日読んだ箇所は、主人公であるクリストフともう一人の人物の会話が多くの部分を占めていました。
 その会話の相手は若い人で、機知と生気とに満ちているというようにいわれていますが、実際におもしろいことを言っていて、クリストフが何度も笑っています。
 しかし、ただおもしろいで済ませられないようなことをする面もあります。それでも、クリストフに受け入れられているようです。クリストフにとって元々特別な存在であると思いますが、その態度にも憎めないところがあるということなのでしょう。

再会

 『ジャン・クリストフ』が終わりに近づく中で、しばらく前に登場していた人たちが再び主人公であるクリストフの前に姿を現すことが続いています。クリストフがしばらく離れていたパリを再び訪ねることがそれにつながっています。
 今日読んだ箇所で描かれていたのは、クリストフにとって以前から知ってはいたものの相互のコミュニケーションが多くはなかった人との再会です。相手との関係を考えると、特にクリストフにとって感動的な出会いだったのではないかと思います。

年齢のとらえ方

 『ジャン・クリストフ』を読み進め、かなり終わりに近づいてきました。主人公であるクリストフの年齢は示されていないのですが、それほど高齢だとは思いません。ですけれども、後に続く世代との違いが描かれてもいます。
 この作品の背景となっている時代のヨーロッパと現代の日本とでは同じ年齢層の人の位置のとらえ方が異なるという面があると思います。日本でも人生50年という言葉があるように、今とは生きるとされている長さが異なっていた時代があります。
 感覚の違いといえば、このブログの主が以前仕事で関わった組織に青年部というものがありましたが、そこでは50歳で卒業することとなっていました。名称から受ける年代のイメージとはかなり違います。

詩集の著者

 『ジャン・クリストフ』の主人公であるクリストフは、本屋で詩集を手にして読み始め、それを買って持ち帰って読み、その後で著者を探し当てて直接会います。
 その著者はクリストフがもともと知っている人物でした。この人物の再登場は意外でしたが、考えてみるとそうなることになっていく伏線がありました。単純に二人が親しくはなれないところが残念です。それでも、この人物が話から姿を消したままでいなかったことは良かったと思います。

長い手紙

 『ジャン・クリストフ』の主人公であるクリストフは、再びパリに滞在します。そこで、ローマにいる女友だちと長い手紙のやり取りをしています。
 その中でおもしろいと思ったのは、クリストフが知り合ったある人物についての長い記述です。クリストフにとって自分の経験に近いものがあると思うような人物ですが、その時点での結果には大きな違いがあります。その人と自分とを比較して考えている内容から、クリストフが自らの成功に関して高慢な思いを持っていないことがうかがえました。
 自分の過去の作品に気に入らないものがあることによる面もあるかもしれませんが、自らを冷静に見られることは優れた点だと思います。

ローマ

 『ジャン・クリストフ』の主人公であるクリストフは、ローマに留まる中でそこにある良いものに対して目が開かれてきたようです。
 とても豊かな歴史のある街であることから、何かは心に触れるのが当然である気がします。そうはいっても、この作品の背景となった時代のローマは芸術家にとって同時代の仲間から受けられる刺激には乏しかったように描かれています。
 才能にあふれた人がなぜか集中する時期と場所も、そういう人がなぜか少なくなる時期と場所も、いずれも実際にあるのだと思います。やや沈滞気味のローマをあえて取り上げて主人公を滞在させたところが興味深いと思います。

親しいお友だち

 『ジャン・クリストフ』の今日読んだ箇所は多くが男女間の会話でした。
 その中で、より親密な関係を求める男性に対して女性の側が「親しいお友だち」としての関係を続けることを主張しています。
 「いいお友だちでいましょう」というのは、日本では男女間で関係が進むことを断るときの常套句である(少なくとも創作の世界では)と思いますが、時代も国も違う作品で似たようなことを言っている場面があるのは初めて読んだ気がします。