3年目の世界文学全集への挑戦

40代既婚の男がふと思い立って世界文学全集に挑んでいます

西欧の両翼

 『ジャン・クリストフ』の主人公であるクリストフは、ドイツで生まれ育った後、フランスで生活しました。そして、「西欧の両翼」たる両国の国民は相互に異なることで補い合えると考えています。これは大切な考え方であると思います。
 ある国民とほかの国民の間でも、もっと小さい単位の相互の関係でも、異なる点について、違うから相容れないと考えることも違うから補い合えると考えることもいずれも可能です。
 ドイツとフランスは現在ではEUの中で固く結びついていると思いますが、かつては戦争をしてきた歴史があります。そのような国同士を広い目で見て補い合えると考えたクリストフの姿勢から学びたいと思います。

ヨーロッパでの世界大戦

 『ジャン・クリストフ』を読み進め、最後かもしれない章に入りました。
 そこでは、戦争の影がヨーロッパを覆っているところから記述が始まっています。二国間の関係が悪化しているというよりも、もっと広い範囲で国同士が対立している様子です。
 最近読んだ『魔の山』では、主人公の個人的な生活に世界大戦が大きな影響を与えていました。戦争は個人の生活を飲み込んでしまうようなできごとです。この先の展開がどうなるかはわかりませんが、ヨーロッパの作品では、特にさまざまな国籍の人たちが登場するような作品では、世界大戦が時代背景としてとても大きなものとして取り扱われるのは当然であると思います。

平静さ

 『ジャン・クリストフ』の主人公であるクリストフはあるとき、とても大きな打撃を受けるようなことを知らされます。
 クリストフがそれを知らせる手紙を受け取ったときにそばにいた人物が、その後で事情を知って会いにいくと、クリストフは平静を保っていた、というように描かれています。
 描写がクリストフから離れ、それからクリストフに戻ってきたときには、もう心が静まっています。その間にどのような心の動きがあったかは記されておらず、想像するしかありません。
 考えさせられる描写だと思います。

金色の果実

『ジャン・クリストフ』の主人公であるクリストフは、下の世代の人たちから批判を受ける立場になっています。
 ある身近な人物と話す中で、クリストフが批判を問題としていないことが示されています。そして、「実を結ばぬ木は苦しめられない。金色の果実を頭にいただいてる木だけが、石を投げつけられる」というアラビアの格言を伝えています。新しい格言を知りました。
 確かに、批判を受けるのは何らかの影響を人に与えているからなのでしょう。ただし、批判される人のすべてが人に大きな影響を与えているということではないと思います。

若者との関係

 『ジャン・クリストフ』を読み進めたところ、少し前にしばらく登場して、もう出てこないと思っていた若者がまた主人公であるクリストフの前に姿を現しました。
 クリストフは人生の先輩としてこの人物に諭しを与えますが、聞く側にはあまり影響がないようです。だからといって諦めるわけでもなくクリストフは働きかけを続けますが、心を動かすのは難しそうです。
 作品の終わり近くになってこういう関係が出てきて、どのように収拾がついていくのだろうかと思います。

老夫婦

 『ジャン・クリストフ』の主人公であるクリストフは、またある人たちと久しぶりに再会します。今回は、しばらく会わないうちに老夫婦となった男女が相手です。
 この老夫婦の描写が2人が互いを大切にする様子を示していて、クリストフも感動したようですが、読んでいて温かいものを感じる描き方でした。

独身男性の部屋

 『ジャン・クリストフ』の主人公であるクリストフは、最近読んでいるあたりでは、パリで一人暮らしをしています。
 あるとき、ある女性に普段の生活のありのままの状態の部屋を見に来られることになりました。話の成り行きにより、断ることも掃除をしておくこともできずにその女性を迎えることになります。
 若い男性によくありそうな話だと思いましたが、独身であれば年代を問わずあって不思議はありません。ただし、クリストフの場合は、部屋の状態を恥ずかしく思うことがあっても、そこに置いてあるピアノを演奏することで感動を与えることもできて、そこが普通の人と異なります。