3年目の世界文学全集への挑戦

40代既婚の男がふと思い立って世界文学全集に挑んでいます

戦争が奪うものと与えるもの

 『誰がために鐘は鳴る』を読み進めるにつれて、登場人物の過去が少しずつわかってきました。 内戦の前の楽しかった思い出や内戦の最中のつらい経験が語られます。 それとともに、グループの中での主導権争いや恋愛が展開していきます。

 勝手に持っているイメージですが、スペインは農産物や魚介類に恵まれていて、貧しい人であってもある程度の食べ物や飲み物を楽しむことができたのではないでしょうか。それが内戦によって損なわれてしまったのではないかと想像します。そうはいっても、ゲリラとして洞窟で生活している主人公の仲間たちには飲食物がけっこう多くあるように思われるので、物質的にはそれほど困窮しているわけではないのかもしれません。しかし、敵がいるからには安心して飲食を楽しむことができるわけではなく、戦闘に備えて力をつけるために食べているという状態なのかもしれません。戦闘を経験する中で心が挫かれてしまったような人もいて、それによって権威を失ってしまいました。

 失ったものが多そうな人たちと対照的に、主人公と一人の女性には内戦中だからこその出会いと恋愛関係が生まれます。

 戦争は人の命などを奪う反面、新しいものを人にもたらすのかもしれません。ただし、多くの人にとっては失うものがはるかに多いのだろうと思いますので、安易な美化はしたくありません。