3年目の世界文学全集への挑戦

40代既婚の男がふと思い立って世界文学全集に挑んでいます

群衆心理

 『誰がために鐘は鳴る』には、ある登場人物が経験した凄惨な場面について語る長い章があります。

 詳しくは書きませんが、普段はおとなしくしていて、かえって虐げられているような人たちが、強い立場に変わったときにしたことが描かれています。最初は人を痛めつけながらも落ち着きはあったところが、尊大な態度を取る相手を見たり恐れによって力が出なくなっている相手を見たりする中で、残酷さをエスカレートさせ、大騒ぎをしながら暴虐に振る舞うようになります。

 それまでの経験によって積み重なってきた恨みだけではなく、群衆の熱狂のようなものがそういう行動の理由であると考えます。一人では決してしないようなことを、群衆の一部になるとしてしまう、ということが自分を含めて人間にはあると思います。たとえば、会議の場で多くの人は恥ずかしくて言えないようなことを、一人そのような発言をする人がいると、それに乗っかってほかの人も次々に言う、というようなことを何度も見てきました。人からそのように見えるような行動を自分もしてきたことは間違いありません。

 群衆心理というものがあるということは知っていましたが、それを示しているような記述を読んで思い出しました。自分がすると思っていなかったようなことをまわりの人に流されてするようなことがないように、確信に基づいて行動することを心がけていきたいと考えます。