軍人志望の従兄
『魔の山』の主人公には、同じサナトリウムに滞在している軍人志望の従兄がいます。いるというか、その従兄が先に滞在していて、主人公は訪問者として会いに行く立場でした。
早く普通の生活に戻って軍隊に入って生活したいと思っていながら、1年以上の療養生活にもかかわらず結核からの回復が思わしくなく、焦りやいら立ちがあるようです。工学方面の勉強をしてきて製造業に就職しようとしている、理性を感じさせる主人公と対比すると違いが浮かび上がる気がします。
体格に恵まれてはいるようですので、その面でも心の面でも準備ができているのでしょうが、それにもかかわらず結核のゆえに望みどおりにならない、というこの従兄のような人たちはかつては大勢いたのかもしれません。