鋭い感性
『南回帰線』は一人称で語られる形式の作品で、主人公が感じたものの描写がそういう作品の中でも多いと思います。
描かれている主人公の行動には変わったところがあると思いますが、見るものの捉え方もとても特徴的です。心の中にあるものが身近にあるものに投影され、それが文字で記されているのでしょうか。目で見たものから感じ取る感性の鋭さを感じます。
小説を書きたいけれども、書きたいことが多すぎて何から書いたらいいかわからない、と主人公が記しているところがあります。鋭い感性を持っていることで、書きたいことがどんどん思い浮かぶのだと思います。