長い手紙
『ジャン・クリストフ』の主人公であるクリストフは、再びパリに滞在します。そこで、ローマにいる女友だちと長い手紙のやり取りをしています。
その中でおもしろいと思ったのは、クリストフが知り合ったある人物についての長い記述です。クリストフにとって自分の経験に近いものがあると思うような人物ですが、その時点での結果には大きな違いがあります。その人と自分とを比較して考えている内容から、クリストフが自らの成功に関して高慢な思いを持っていないことがうかがえました。
自分の過去の作品に気に入らないものがあることによる面もあるかもしれませんが、自らを冷静に見られることは優れた点だと思います。