緊張した共同生活
『テス』の主人公とその夫の間の緊張した共同生活についての記述がしばらく続いています。
夫の側は、テスに親しみを感じることはできない、しかしながら、テスを憎んでいるわけでもない、といった様子ではないかと思います。
わざと傷つけ合うようなけんかはどちらもするつもりがなく、相手からの攻撃による傷はいずれにもなさそうですが、どの方向にも進みづらく、一緒にいて何をしても傷つけ合ってしまうような苦しい状態のようです。
いわゆる善人同士の関係に邪悪さではなく弱さのゆえのトラブルがある場合にありそうなことが、上手に、強い調子で描かれていて、出口が見えないつらさのようなものを感じます。