3年目の世界文学全集への挑戦

40代既婚の男がふと思い立って世界文学全集に挑んでいます

衝突

 『テス』の今日読んだ箇所では、主人公と近所の女性たちとの間で衝突が起きます。
 その衝突の背景には、主人公が好きでもない男性を巡ってのねたみがあり、言いがかりといえそうです。そこから逃れようとしたことが、また別の災いにつながってしまうのが気の毒です。
 この男性は、真剣な男女交際をしようとしているようには見受けられませんが、この作品の背景になった時代と地域での関係というのはそういったものだったのでしょうか。

良くないことの暗示

 『テス』の地の文は特徴的だと感じます。たとえば、登場人物がしたことだけではなく、気づかなかったことを記して、読者に本来はどうであった方が良かったかを示しています。
 そういう記述を通して、登場人物の置かれた立場を知らせてくれていますが、良くないことがありそうな暗示になっていると思いますので、不安を感じさせられます。

孤立

 『テス』の主人公は、前回の記事に書いたとおり親の指図に従って行動しますが、そこで心地良くない経験をし、気の毒に思います。そうはいっても、何もかもが悪いということでもない様子もあります。
 具体的には、住み込みで働き始めていて、働くといっても奴隷のようなひどい待遇でないようではあります。
 通信手段が発達していれば、想定と異なることがあれば家に連絡することもできそうですが、この作品の時代ではそのようなわけにはいかなさそうです。ですから、孤立した状態での生活ということになります。
 主人公がひどい苦しみを受けることがないことを望みます。

親の指図

 『テス』の主人公は、自分の失敗によって家族に対して負い目を感じ、親からするように言われたことをすることになります。それは、ある人に会いに行くことでした。
 会いに行った人には会えなかったもののその家族に会って話すことができました。歓迎されたようではありながら、語り手は良いことではなくて悪いことが起きていることを記しています。
 両親にはそれぞれ思惑があり、相談できる人がほかにいるわけでもないのは、つらい状態です。

マルサス

 『テス』を読んでいたら、先日の記事にも記した主人公の家族構成に関する話がまた出てきました。
 その中で、子どもがたくさんいて口が多くなっていることを指しているのだと思いますが、『人口論』を著したマルサスの名前が出てきました。少子化が問題になっている現代の日本と大きく異なりますが、自営で生活していて、子どもが増えても収入がすぐには増えないという状況の困難さは、『テス』の書かれた時代の現実的な問題だったのだろうと考えます。

虫の食ってる星

 『テス』の中に、主人公と弟が夜空を見ながら話す場面がありました。
 主人公は、星をりんごの実になぞらえて、たいていはりっぱで無傷だけれど、虫の食ってるのも少しはある、としています。そして、自分たちがどの星に住んでいるかと問われて、虫の食ってる方だと答えます。
 実際に厳しい生活をしているように描いているのでしょうが、うまい表現をするものだと思います。

家族構成

 『テス』を読み進めたところ、主人公の家族構成が紹介されました。
 主人公が6人きょうだいで、末の子はまだ1歳であることがわかりました。豊かな家庭ではないようです。主人公と母親が会話する場面で、母親は方言だけで話すが、主人公は方言だけでなく学校で習った言葉でも話す、ということが示されました。
 このように、主人公の世代と母親の世代との間には大きな違いがあるようです。そのようなことがある時代がこの作品の舞台となった時代として紹介されており、こうした背景は話の展開に大きな影響があるかもしれません。