3年目の世界文学全集への挑戦

40代既婚の男がふと思い立って世界文学全集に挑んでいます

2015-10-01から1ヶ月間の記事一覧

セーフティーネット

『大地』に描かれている大干魃による飢饉の様子をきっかけに、セーフティーネットというものについて考えました。 その時代の中国には国や地域という単位での助け合いというものはなかったように思われます。公的な枠組みではなく、親族や近所の人同士が助け…

富の蓄積

『大地』の始めのあたりでは、主人公とその妻の勤勉に働く姿が印象的です。ほかの人よりも余分に働いて、節約できるところでは節約して、現金を得るために作物を焦って売ることをしない、ということの積み重ねによって、売りに出ているほかの人の農地を買う…

バック『大地』

今日からバックの『大地』を読み始めました。 新潮文庫に収録されている新居格氏の訳によるものを読んでいます。 中国の貧しい農民の暮らしぶりから始まりましたが、始まってすぐのあたりに出てくるお金持ちの女性が当然のように阿片を吸っているような記述…

『車輪の下で』を読み終えました

今日、『車輪の下で』を読み終えました。 もっと続くかと思っていたら、急転回に思えるようなエンディングでした。 主人公が見習いとして働き始めて、職場で先輩に当たるもともとの親友やほかの先輩たちと一緒に楽しんでいる場面があり、ドイツの庶民の楽し…

リンゴの果汁搾り

『車輪の下で』に、主人公の住んでいる町で住民たちがリンゴの果汁を搾るところが描かれています。 圧搾場で圧搾機を借りて持ち込んだリンゴを搾るようですが、そこに知り合いの子どもを招待したりして、人々の交流の場になっています。集まる人たちの楽しそ…

思い出の場所

『車輪の下で』の主人公は訳があって実家に帰ります。 生まれ育った町で日々を過ごす中で昔の思い出がよみがえってきます。思い出の場所やそこでの経験についての記述があり、主人公にもそういう時期があったのだということが巧みに描かれています。 家の近…

生徒をつぶす教師と同級生

『車輪の下で』では、主人公のまわりで同級生が亡くなったり退学になったりしていなくなってしまいます。 退学になった生徒は反抗的だということでもともと教師たちから目をつけられていたのが、同級生からの告げ口によってさらに締め付けを受けるようになり…

生徒たちの活動

『車輪の下で』は学校が舞台になっていて、主人公だけでなくほかの生徒たちのしていることも描かれています。 今日読んだ箇所では、ほかの生徒たちの活動についての記述がおもしろかったです。グループを作って音楽を演奏する人たち、戯曲を読む人たち、聖書…

車輪の下敷き

『車輪の下で』を読む中で、作品のタイトルと同じような言葉が出てきました。 主人公が校長から学業の成績が下がってきていることを注意される中で、手を抜くと車輪の下敷きになってしまう、というようなことを言われます。 校長が最も問題視しているのは、…

学校での友人

『車輪の下で』の主人公の学校生活は大部屋での共同生活です。同じ部屋の仲間たちのうち数人が取り上げられてその特徴が描かれています。 その中である特定の人と関係が近くなったり、きっかけがあって疎遠になったりしています。自分と似ているとか逆に自分…

学校教育の目的

『車輪の下で』の主人公は、周囲の大人からさまざまな影響を受けています。 今日読んだ中で印象に残ったのは、主人公が通っていた学校の校長です。この人にとって学校は、自然の人間を砕き、打ち負かして、力で制限を加えなければならないものであるとされて…

ヘッセ『車輪の下で』

今日、ヘッセの『車輪の下で』を読み始めました。 日本語訳の題名は『車輪の下』とされることが多いと思いますが、松永美穂氏の訳で光文社古典新訳文庫に収められているものは『車輪の下で』という題名になっています。それを読んでいることから、ここでもそ…

『誰がために鐘は鳴る』を読み終えました

今日、『誰がために鐘は鳴る』を読み終えました。 締めくくりは少し予想外でした。 主人公は、共和国側で戦うことに意義を感じていたでしょうが、その戦いの中で出会った女性と愛し合うことで真に生きていると感じることができたのではないかと思います。主…

決着のつく朝

『誰がために鐘は鳴る』を読んできて、山場と思われるところまできました。 主人公が命令された作戦については、中止の可能性もある状態で話が進んできました。そして、作戦を実行する予定の時になりました。 味方の人数が足りなかったり、人数に数えるにし…

東京ヤクルトスワローズの日本シリーズ進出

今回は普段と違ってプロ野球を話題にします。 東京ヤクルトスワローズがクライマックスシリーズを制して日本シリーズへの進出を決めました。真中監督も言っていましたが、ファンの皆様、おめでとうございます。 相手が前年の日本一で、しかも実際に今も強い…

善人の怠惰

主人公の身近にもそういう人が出てきていましたが、今日読んだ箇所には、主人公がいるのとは別の場所についての記述で怠惰だと思われる人たちが出てきました。 ファシスト側に対する共和国側を善だとするのは安易な気もしますが、良い方向に変革させたいと考…

過去も未来もない時

今日読んだ箇所では、主人公たちにとっての決戦の時がさらに迫ってきています。 ネタばれにならないように細かいことは記しませんが、そういう立場に身を置いているからこそか、主人公が体験している正にその瞬間を貴重なものとして味わっているような記述が…

動きが激しくなってきました

主人公が命じられた作戦の実行予定の日に日付が変わるあたりで、『誰がために鐘は鳴る』ではさまざまな角度から人々の行動が描写されるようになってきました。 マドリードにいる共和国側の人たちや、主人公が手紙を預けた仲間の一人の様子が描かれるとともに…

敵側の人たち

『誰がために鐘は鳴る』は、これまで読んできたところでは主人公がいる場面の描写が大部分でしたが、1章をまるまる主人公がいない場で起きたことの描写に割いている箇所がありました。仲間たちの戦闘の場面です。 そこでは、敵側の行動や心の中までが述べら…

人の命を奪うことについての考え方

『誰がために鐘は鳴る』の主人公は、スペイン内戦において人の命を奪ったことが少なからずあるようです。心の中の会話に、殺した人数をおぼえていない、というような記述があります。 好き好んでそうしてきたわけでも、自分に人を殺す権利があると思っている…

心強い仲間

主人公の味方のうちの頼りにならなさそうな人が明らかになりつつあるとともに、一緒に戦っていけそうな仲間の心強い発言も出てきました。難しい状況がありながらも主人公が頼んだことをしっかりとし続けてくれた人もいましたし、皆が頼りにならないのではな…

敵の接近

主人公の心の声に続いて、仲間たちとのやり取りや男女関係の話があった後で、敵との遭遇の場面がありました。 その中で、頼りにならない人が露わになってきます。正規の軍隊でないからには個々の能力が高くないのはしかたがないとして、ひとりひとりに当事者…

内戦時のマドリード

『誰がために鐘は鳴る』で主人公の心の思いが長く述べられている箇所に、そのときに果たそうとしている務めを終えたらマドリードに行こうと考えるところがあります。これから行こうと考えるとともに過去を回想していて、マドリードでの人とのやり取りなどが…

高い理想

『誰がために鐘は鳴る』を読んでいると、主人公の心の中の言葉が長く続く箇所がところどころにあります。今日読んだ箇所もそのうちの一つです。 スペイン内戦に関わってきた過去を回想している中で、貧しい人たちのために戦いに加わったという動機が述べられ…

マツダスタジアム

マツダスタジアムでの試合で、中日ドラゴンズの今年の公式戦がすべて終了しました。 山本昌投手のための粋な計らいがニュースになっていて、それを見てうれしく思いました。 今年、野球観戦に行ったのはマツダスタジアムでのカープとベイスターズの試合だけ…

内輪もめ

『誰がために鐘は鳴る』の上巻を読み終えて、下巻に進みました。もともと考えていたよりもおもしろく読めています。 主人公が一緒に行動している味方の側の人たちには不一致があり、衝突する様子が描かれています。一時的に収束しても解決には至らず、とげが…

5月の雪

【読み進める中で、ここで「6月」としているのが実際には「5月」であったことがわかりました。ここにそのことを記した上で、本文はそのままにしておきます。】 文庫で上巻と下巻に分かれている版で『誰がために鐘は鳴る』を読んでいますが、上巻の終わりに…

『リンカーン』を見ました

内戦が背景になっている『誰がために鐘は鳴る』を読んでいるからというわけではないのですが、映画『リンカーン』を借りてきて、昨日は映画そのものを見て、今日は特典映像を見ました。 奴隷解放宣言もゲティスバーグでの演説も既に過ぎ去った時期が舞台で、…

いまこの時を大切に生きる

『誰がために鐘は鳴る』を読んでいるとよく主人公の心の中での独り言が長く続くところがあります。今日読んだ箇所もその中の一つです。 愛する女性がそばにいて、それでも戦争に加わっている中で明日より先には一緒にいられるかわからないという状況にいる主…

語り伝えることと書き残すこと

「群衆心理」という記事に書いたように、『誰がために鐘は鳴る』では、ある登場人物が経験した凄惨な場面について語る箇所があります。スペイン内戦の中で一方の側の人たちがもう一方の側の人たちに対して行ったことで、それは語った人物の属する側の人たち…