3年目の世界文学全集への挑戦

40代既婚の男がふと思い立って世界文学全集に挑んでいます

2016-08-01から1ヶ月間の記事一覧

中にいるが属していない

『南回帰線』の主人公は、米国の国民として、商品に需要があって忙しい会社の社員として、家族の中の夫や父として、そしてほかの共同体にも一員として存在しています。しかしながら、どこでもまわりの人と一体感を感じられていないようです。 中にいるけれど…

外国についての話

外国に実際に行くことや外国の話を聞くことは、人が考え方を新たにするきっかけになると思いますが、『南回帰線』の主人公はフランスに行っていた友人ができて、その友人の話から影響を受けます。 現代であれば海外旅行はかなり身近になっていますが、この作…

1年の振り返り

このブログを始めたのは、昨年の8月26日でした。世界文学全集に収録されるような作品を読むことと、そのことを中心にしたブログを書くことを、1年間継続することができました。 内容をよく理解できたとは思えませんが、歴史に残るような名作を毎日少しでも読…

繁栄の陰にあるもの

『南回帰線』で描かれているのは、2度の世界大戦の間の米国だと思いますが、その頃の米国は、世界の中では極めて繁栄した場所だったのではないかと考えます。 それでも人々は、特に精神面で、問題を抱えているように描かれています。経済的に繁栄していても…

小説を書く理由

『南回帰線』は自伝的な作品だそうです。 どの程度が実際に起きたことであるのかはわかりませんが、今日読んだ箇所では、苦労した末に見つけた仕事をする中で小説を書き始める過程が描かれていました。最初は作品が認められなかったようです。誰も信じてくれ…

ミラー『南回帰線』

今日から予定を変更してミラーの『南回帰線』を読み始めました。 ロランの『魅せられたる魂』を読もうとしましたが、本文の前に載っていた、新版への序を読む中で、それよりも先に書かれた『ジャン・クリストフ』を読みたいと考えました。書かれた順番は調べ…

『白痴』を読み終えました

『白痴』を読み終えました。 最後のあたりは、複数の人たちの不可解な行動が積み重なって、このブログの主にとっては不思議な状況になります。結末ですっきりすることも、しめくくりまで読んだ上でこれからどうなるのだろうと考えさせるような余韻を感じさせ…

結婚式の日

『白痴』を読み進め、かなり終わりに近づいてきました。 主人公が結婚式を挙げる日が来て、そこでまた一悶着あります。意外といえば意外な展開ですが、物事がすんなり進むことの方がこの作品らしくない気もします。 最後かもしれない章に入りました。

新たな展開

『白痴』の今日読んだ箇所では、昨日読んだ箇所から2週間が経過していて、その間に主人公を含む多くの人の状況が大きく変わっていることが記されています。新たな展開です。 そして、2人の登場人物による会話を通して、物事がそこに至るようになった事情が…

対決

『白痴』の今日読んだ箇所では、二人の登場人物が言い争いによって対決します。主人公も連れて行かれてそれを目の当たりにしました。 一方からもう一方へ手紙が届けられたことが複数回あり、その内容も紹介されていましたが、直接の言い争いは初めて記されて…

主人公の意見の表明

『白痴』の今日読んだ箇所では、主人公が長い間にわたって話し続けている場面がありました。 かつて世話になった人に関わる話を聞いたことがきっかけだと思いますが、通常であれば意見の対立があるような話題を避けて無難なやり取りをするような場で、自分の…

誘惑

『白痴』の主人公は、子どものような純粋さを失わずにいると思います。たとえば、あまり深く考えずに、考えると気にして言えなくなってしまうようなことを言うことがあります。 今日読んだ箇所では、身近な人から、ほかの人からまたほかの人に向けて書かれた…

針鼠

『白痴』の今日読んだ箇所では、ある人からある人へ仲直りのために針鼠(訳の文では漢字が使われていました)を贈る場面がありました。 訳注によると、ロシアではハリネズミが普通にペットとして飼われていたとのことですが、それにしても唐突感があります。…

衝突

『白痴』の今日読んだ箇所では、しばらく主人公が出てこない場面が続き、その後で主人公が登場します。 主人公がいない場面では、衝突がさまざまな登場人物の間で起きます。この場面は特にそうだったのですが、この作品は人々の衝突が多いと思います。登場人…

平凡な人たち

『白痴』を読み進めて、恐らく最後の第4編に入りました。 第4編の最初では主人公が登場せず、ほかの人たちがまず出てきますが、その前に筆者の考えに関する記述があります。それは平凡な人たちについての話です。平凡な人は世の中にたくさんいるので、そのよ…

入り組んだ話

昨日の記事で、『白痴』の主人公が信頼されているというようなことを書きましたが、ある女性から呼び出されたのは信頼されているからとは言い切れなさそうです。ほかの女性も関わる話で、入り組んでいます。 入り組んでいるといえば、主人公は、ある男性から…

信頼される誠実さと信頼に応えていく力

『白痴』の主人公は、ある女性から待ち合わせて会うことを頼まれて、実際にその場所で出会います。それによって恋愛という面で関係が発展するかというとそうでもなさそうであるところが単純ではありませんが、主人公も恋仲になることを望んではいないのでは…

人生の価値

人生の価値は何によって決まるのでしょうか。 『白痴』のある登場人物は病気のためにあと数週間の命しかないと言われています。残り短い命で、人のために良いことをしようと思っても時間がかかることはできないと考え、自分の人生に価値がないと考えている様…

世界を救うものは美である

『白痴』の主人公は、世界を救うものは美だと主張した、とほかの登場人物から言われます。それを読んで、数年前に読んだ本を思い出しました。 このブログの主はキリスト教徒で、キリスト教についての本を読みます。その中の1冊に、Brian Zahndという人が書い…

主人公の恋愛関係

『白痴』の主人公とある女性との関係については、相思相愛であることがほのめかされているように思います。しかしながら、男性である主人公の側から積極的に動いて関係を深めていこうというところは目立ちません。自身が病気であることで気後れがしていると…

主人公以外の人物の内面の描写

『白痴』の今日読んだ箇所には、主人公以外のある登場人物の心の思いがかなり詳しく述べられているところがありました。このあたりまでにはなかったような記述です。 主人公が関わっているある家庭の中心的な存在であることから、この人物の思いを紹介してお…

二重のメッセージ

『白痴』の主人公は、深い洞察力を持っているように思いますが、単純なところもあります。 今日読んだ箇所では、本当は会いに来てもらいたいにもかかわらず反対のことが書かれた手紙を真に受けていたところを、差出人の母親から娘の本当の思いを知らされる場…

二重の考え

人間は完全に善良ではありえない反面、多くの人には邪悪な面だけではなく善良な面もあると思います。 『白痴』の今日読んだ箇所で、「二重の考え」という表現が出てきました。善と悪とが心の中で同居する様子を表現していると考えます。ある登場人物が、自ら…

頭文字だけで呼ばれる人物

『白痴』を読み進めていますが、主人公の住んでいる場所に多くの登場人物が入り乱れている場面がしばらく続いています。 そこに加わっているある登場人物は、ほかの人たちが名字と名前を合わせて紹介されている中で、Щ(シチャー)という頭文字と爵位のみで…

財産に伴って来るもの

昨日の記事で、『白痴』の主人公が、起こったできごとによって冷静さを失うことなく行動できていそうだという印象を記しましたが、実際には後悔するようなことを言ってしまったようです。 主人公が巻き込まれた事件は、大きな財産が手に入ったことが人前で明…

人を中傷するような記事

現代の日本と同様に、『白痴』の舞台になっている時代にも、さまざまなメディアがあったようです。今日読んだ箇所では、主人公を中傷するような記事が新聞に掲載されていたことが紹介されました。しかも、本人の眼の前で朗読されました。 内容が事実であるか…

プーシキンの詩

『白痴』の今日読んだ箇所では、ある登場人物がプーシキンの詩を朗読する場面がありました。 その詩の中で人の名前のイニシアルのところを、自分たちに関係がある人物の名前に変えていたところがポイントで、気づく人は気づいて、気づかない人は気づかない、…

癲癇の発作

『白痴』の主人公は癲癇持ちであることがはじめのあたりで紹介されていますが、今日読んだ箇所で初めて発作の様子が描かれています。 実際に経験したか、経験者から聞いたかして書いたのかと思いましたが、ドストエフスキーが癲癇に悩まされていたことを初め…

三角関係

『白痴』の主人公は、ある男女との間で三角関係のような状態になっています。 その男女は結婚の日取りまで決まりながらも実現せず、女性の側に男性の側が振り回されているようです。主人公と男性の間は、言葉づかいを見ると、もっと前の箇所と比べて関係が近…

モスクワとペテルブルグ

『白痴』のはじめのあたりは舞台がペテルブルグでしたが、話が進む中で登場人物がペテルブルグとモスクワの間を行ったり来たりするようになりました。そうはいっても、実際に人が動き回り会話をするのはペテルブルグのままです。 ペテルブルグとモスクワの間…