3年目の世界文学全集への挑戦

40代既婚の男がふと思い立って世界文学全集に挑んでいます

シドン

 『イリアス』の今日読んだ箇所に、シドンという聖書で見たことがある地名が出てきました。
 シドンは現在のレバノンに位置していたフェニキア人の都市であるようです。この作品の舞台になっているトロイアは現在のトルコの西の方で、シドンとはかなり距離がありますが、地中海を航海して行くことが可能だったということなのでしょう。
 自分が少しでも知っている地名が意外にも出てくるとおもしろいものです。

前の代の交遊

 『イリアス』を読む中で、戦争をしている両軍の先頭に立って戦う登場人物たちが、自分が何者であるかを話し、前の代の人たち同士が知り合いであることが明らかになる場面がありました。
 敵と味方に分かれてはいますが、その2人の間では戦うことをしないことになりました。
 個人が識別されるような戦いの中だからこそのできごとで、現代と違う、顔が見える戦いの一場面です。

泣き言を言う神

 前回の記事で扱った血を流す女神に続いて、『イリアス』に、泣き言を言う神の様子が描かれています。
 正確には、助けを求めに行った神から泣き言をならべるのはやめぬか、と叱られています。この作品に登場する神々は、死ぬことがなく、医師から手当てを受ければ傷も速やかに癒される、というように、肉体は強いようですが、精神的には成熟していないように見えます。

血を流す女神

 『イリアス』の今日読んだ箇所では、女神が人間の攻撃によって傷を受けて血を流す場面がありました。
 神々が出てきて人間同士の戦争に介入したりしなかったりというのが不思議でしたが、ついに人間の手にかかって傷を受けさえしました。血を流すといっても、それで命を落とすことはないようです。
 当時の人たちはこういう話を違和感なく受け止めていたのだろうか、などと思ってしまいますが、今の時代に当たり前だと思われていることが将来おかしなことだと思われるようになる可能性は大いにあるのだと考えます。

大活躍

 『イリアス』ではさまざまな人に話の焦点が移ります。
 しばらく、ある登場人物の戦場での大活躍の様子が描かれます。この人物に倒される人たちは、その場面に登場するだけだと思いますが、その背景が一人ひとりについて記されています。
 そういう効果が狙われているのかはわかりませんが、戦場に倒れる人たちにはそれぞれの背景があるということを考えさせられました。

偉大な父親

 『イリアス』の登場人物のうち、ある人たちは高名な父親を持っているようで、元々、誰々の子という言い方をするようですが、この人たちは父親がどれほど偉大であったかということを聞かされます。
 それに対しては、父親との関係がどういうものか、その人自身がどういう実績を持っているか、などによって様々な反応があり得ると思います。
 今回読んだ箇所に登場する人たちにとっては、偉大な父親を引き合いに出されることは単純に心を励まされることではなさそうです。

激励

 『イリアス』の今日読んだ箇所では、戦争に臨む軍隊の中で、上位の人物が陣営を回って兵たちと兵たちを率いる人たちを激励しています。
 特に、兵たちを率いる人たちとの話が記されていますが、相手に合わせて話す内容が異なり、それぞれの特徴が示されます。
 人と人とのつながりを描いていて、見せ場の一つであるように感じます。