3年目の世界文学全集への挑戦

40代既婚の男がふと思い立って世界文学全集に挑んでいます

『ジャン・クリストフ』を読み終えました

 『ジャン・クリストフ』を読み終えました。
 主人公であるクリストフから記述が長い間外れて、クリストフ以外にも数人の登場人物についてかなり詳しい描写がありました。このブログの主の読み方が浅いせいかもしれませんが、その人物が登場しなくても話の展開に影響はないのではないかと思うような人についても、心に残る描き方がされているところがありました。
 クリストフよりも年上だったり、クリストフよりも年下だったりする人たちが登場して、クリストフを中心に幅広い年代の人物が登場する作品でした。
 クリストフが天才として描かれているために共感しにくい気がしましたが、クリストフをはじめ、精一杯生きる人たちの姿に励まされました。
 次は『白鯨』を読むつもりです。

一人でも孤独でない人

 『ジャン・クリストフ』を読み進め、いよいよあと数ページになりました。
 主人公であるクリストフは、自分のそれまでの人生を振り返り、一人でいたときも孤独でなかった、と考えます。親しい人たちがそばにいなくても、心がつながっている、ということがクリストフを力づけていたのだと考えます。とても幸いなことだと思います。

執着心の弱まり

 『ジャン・クリストフ』が結末に近づく中で、主人公のクリストフの執着心が弱くなっている様子が見えます。
 個人のことだけでなく、社会の風潮についても、状況に左右されなくなってきています。
 自分にできることはしてきたという思いからなのか、物事は変わっていくものであってこだわりはない方が良いと考えているのか、達観しているように見えます。
 年を重ねて頑固になるのではなく、自分のまわりのことをあるがままに受け入れる態度は、心の平安につながりそうです。

西欧の両翼

 『ジャン・クリストフ』の主人公であるクリストフは、ドイツで生まれ育った後、フランスで生活しました。そして、「西欧の両翼」たる両国の国民は相互に異なることで補い合えると考えています。これは大切な考え方であると思います。
 ある国民とほかの国民の間でも、もっと小さい単位の相互の関係でも、異なる点について、違うから相容れないと考えることも違うから補い合えると考えることもいずれも可能です。
 ドイツとフランスは現在ではEUの中で固く結びついていると思いますが、かつては戦争をしてきた歴史があります。そのような国同士を広い目で見て補い合えると考えたクリストフの姿勢から学びたいと思います。

ヨーロッパでの世界大戦

 『ジャン・クリストフ』を読み進め、最後かもしれない章に入りました。
 そこでは、戦争の影がヨーロッパを覆っているところから記述が始まっています。二国間の関係が悪化しているというよりも、もっと広い範囲で国同士が対立している様子です。
 最近読んだ『魔の山』では、主人公の個人的な生活に世界大戦が大きな影響を与えていました。戦争は個人の生活を飲み込んでしまうようなできごとです。この先の展開がどうなるかはわかりませんが、ヨーロッパの作品では、特にさまざまな国籍の人たちが登場するような作品では、世界大戦が時代背景としてとても大きなものとして取り扱われるのは当然であると思います。

平静さ

 『ジャン・クリストフ』の主人公であるクリストフはあるとき、とても大きな打撃を受けるようなことを知らされます。
 クリストフがそれを知らせる手紙を受け取ったときにそばにいた人物が、その後で事情を知って会いにいくと、クリストフは平静を保っていた、というように描かれています。
 描写がクリストフから離れ、それからクリストフに戻ってきたときには、もう心が静まっています。その間にどのような心の動きがあったかは記されておらず、想像するしかありません。
 考えさせられる描写だと思います。

金色の果実

『ジャン・クリストフ』の主人公であるクリストフは、下の世代の人たちから批判を受ける立場になっています。
 ある身近な人物と話す中で、クリストフが批判を問題としていないことが示されています。そして、「実を結ばぬ木は苦しめられない。金色の果実を頭にいただいてる木だけが、石を投げつけられる」というアラビアの格言を伝えています。新しい格言を知りました。
 確かに、批判を受けるのは何らかの影響を人に与えているからなのでしょう。ただし、批判される人のすべてが人に大きな影響を与えているということではないと思います。