3年目の世界文学全集への挑戦

40代既婚の男がふと思い立って世界文学全集に挑んでいます

ハープ

 『テス』の今日読んだ箇所に、ある男性が夕暮れにハープを演奏していて、それを主人公が聴いている場面がありました。
 とても良い雰囲気だと思います。楽器も演奏も大したことはなかったようですし、演奏している人物はただ自分がしたいからしていた様子ですが、主人公との距離が縮まることにつながりました。
 だからといってすぐに恋愛関係になってはいませんが、心にある思いを出し合える関係が始まっています。
 悩める者同士を音楽がつなぐ、記憶に残りそうな場面でした。

一人ひとりの違い

 『テス』の今日読んだ箇所でも、主人公が再会した人物を中心として話が展開しました。
 聖職者の子として生まれて大人になってから農民の中に初めて入り込んだこの人物が、一言で農民といっても同じではなく一人ひとりは異なることを知ったというような場面がありました。
 人が皆それぞれ違うというのは当たり前ですが、それをことさら取り上げるようなことをするほど、一部の人にとってはステレオタイプ的な見方が身についているということなのでしょうか。

再会

 『テス』を読み進めたところ、主人公が作品の冒頭で一度会った人物と再会する場面が出てきました。
 そして、記述の中心がしばらくこの人物に移ります。聖職者の息子でありながら父親と異なる思想を持ち、父親が期待するように聖職者の道を選ばなかっただけでなく、意外な進路を選んでいるようです。こちらはこちらで興味深い人物です。

旅立ち

 『テス』の主人公は、家族も承知の上で家を出て、生まれ育った地とは異なる地へと旅立ちます。温かく見送られてはいません。
 それまでいた地では小規模な酪農が行われていたようですが、新しく住む地は同じ酪農でも実施している規模が大きいようです。細かいことを気にしないような風土があるかもしれないと想像します。

実体のある心の痛み

 『テス』の主人公は、人からどう思われるかを気にしないようにし始めることができましたが、人目とは関係のない、実体のある心の痛みを経験します。
 家族が力になってくれないばかりか、聖職者にも助けてもらえず、とても苦しい状態です。
 一区切りついて、次の箇所の見出しを見ると、このあたりがどん底のようです。

つかの間の思い出の種

 『テス』の主人公は、人の目を気にして引きこもるような境遇になってしまいます。
 その後しばらく経って主人公がまた表に出るようになったところに時期が移ります。自分がほかの人にとってつかの間の思い出の種にすぎないということに気づいたことで行動が変わったようです。つまり、人がどう思うかは一時的なものである、という事実を認識することで、人の目を気にする必要はないと考えるようになったようです。物の見方の大きな転換だと思います。

本音

 『テス』の主人公は、家族に知らせることなしに、住み込みの仕事先から家に戻ります。
 そうしようと決心する理由があったからですが、その理由を母親に話しても理解してはもらえませんでした。子をことを思う気持ちからその住み込みの仕事を勧めたと自ら思おうとしていたのかもしれませんが、この場面で本音が露わになっていると思います。この親子関係はどのようになっていくでしょうか。